目次
はじめに
米国株ETFの分析・比較記事については、既に諸先輩方が数多くの記事を上げられているところです。
その中でも、結局どのETFが良いの?という議論についても、概ね結論は出ています。
バンガード社のETFを中長期で買い持ちするなら、
米国株ほぼ全てを網羅する「VTI」(またはS&P500連動の「VOO」)、生活必需品セクターの「VDC」が特に鉄板です。
(あるいはブラックロック社、ステート・ストリート社などの類似ETFを買い持ちする方もいます)
著者もその見解に異論はありませんし、上記ETFを自分のポートフォリオにも入れています。
その上で、しかし本記事ではバンガードの全業種セクターETFを「あえて一気に」長期チャートで比較してみます。
理由は、結論は大体分かっているが、それでも自分で全比較データを見て改めて納得したかったからです(強情)。
バンガード全業種セクターETF(+VTI)概要
※出典は米国会社四季報【2017秋冬号】。
VTI・・・米国株の投資可能銘柄のほぼ100%を対象にした指数に連動。3613銘柄を組入れ、上位10社で16%。業種は金融20%、IT18%。
VCR・・・一般消費財・サービスセクター。377銘柄を組入れ、首位のアマゾン12%、上位10社で46%。
VDC・・・生活必需品セクター。102銘柄を組入れ、首位のP&G11%、上位10社で62%。
VAW・・・素材セクター。素材は化学が主体。119銘柄を組入れ、ダウ・ケミカル9%、デュポン8%など上位10社で48%。
VIS・・・資本財・サービスセクター。航空・宇宙関連が3割超。342銘柄を組入れ、首位のGEが8%。
VOX・・・電気通信サービスセクター。27銘柄を組入れ、ベライゾン24%、AT&T23%と、2社の影響大。
VGT・・・情報技術セクター。364銘柄を組入れ、アップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、フェイスブック4社で4割超。
VHT・・・ヘルスケアセクター。364銘柄を組入れ、ジョンソン&ジョンソンが10%。
VDE・・・エネルギーセクター。133銘柄を組入れ、エクソン・モービル22%、シェブロン14%。
VFH・・・金融セクター。411銘柄を組入れ、上位5社で3分の1を占める。利上げ期待で売買高急増するも、直近は小康。
VPU・・・公益事業セクター。業種は電力が58%。76銘柄を組入れ、上位10社で50%。
こうしてテキストで改めて見比べてみると、セクターごとの個性も浮き彫りになりますね。
特に上位2社の影響が大きいVOX(電気通信)、VDE(エネルギー)に関しては、それなら個別株保有で良くないか?という結論に達する方もいるでしょう。
その点に関しては、ETFの強みである分散性、個別株とのパフォーマンス比較、信託報酬、流動性などを秤にかけた上での判断でしょうね。
著者の場合は現在、電気通信セクターでは個別株(VZ、T)のみ保有、エネルギーセクターでは個別株(XOM、CVX)とETF(VDE)の両方を保有しています。
バンガード全セクターETF(+VTI)比較チャート
※出典はYahoo Finance(英語版)。
※画像が小さくて見辛い場合、クリックで拡大表示できます。
※チャートには配当(再投資)は加味されていません。
全期間
まずは、全期間(2004年以降)チャートです。13年以上の期間として見ると、時代の変化をしみじみと感じます。
1位・・・VGT(情報技術)
ワースト1位・・・VFH(金融)
最初に目を引くのはやはりリーマンショックですね。
下げ幅の大きかったVGT(情報技術)、低かったVDC(生活必需品)と、明暗がきっぱり分かれています。
しかしここで興味深いのは、VGTも2004年からずっと買い持ちしていれば、下落時でもキャピタルゲインではVDCをアウトパフォームしていた(※)、という事です。(※配当は考慮外)
とはいえ、それはITバブルの崩壊後、ITセクターの期待値が今よりずっと低かった時代に仕込めていれば、というたらればの話ではありますが。
そしてこのチャートだと、VFH(金融セクター)はリーマンショック以後、完全に取り残されているように見えてしまいます。
それだけ金融危機直前が割高になっていた、という見方も出来ると思います。もし、さらに長期で見る事が出来たら、また景色は変わってくるのでしょう。
直近5年間
1位・・・VGT(情報技術)
ワースト1位・・・VDE(エネルギー)
VGTの独壇場は変わりませんが、ワースト1位はVDEで-25%という下落率です。
反面、VFH(金融)はTOP3にまで躍り出るという快挙。
配当再投資を前提とする投資スタンスの場合は、大幅に出遅れているVDEを格好の仕込み時、と捉える見方もあります。(著者はこの立場です。)
ただし、未来は誰にも分からないため、VTI(市場平均)のみ、または他のセクターに投資するのも一興でしょう。
直近2年間
1位・・・VGT(情報技術)
ワースト1位・・・VDE(エネルギー)
1位とワースト1位は変わりませんが、目を引くのはVDC(生活必需品)の不調です。どうしたVDC?お腹いたいの?
・・・このように、特定のETFに対する一種の愛着、あるいは人格すら錯覚してしまう病を、「ETF買い持ち症候群」と呼びます。(呼びません)
直近1年間
1位・・・VFH(金融)
ワースト1位・・・VDE(エネルギー)
ここに来て、また景色が一変します。
全期間でワースト1位だったVFHが、1位に返り咲いたのです!おめでとうVFH。ぱちぱち。
FRBの利上げ期待が押し上げた形ですね。
そして、VGTも僅差で2位につけています。・・・個人的には、そろそろ過熱感が怖くなってくる所です。
「情報技術セクターのパフォーマンスは、FANG、MANT銘柄をはじめ実績に基づく評価であり、以前のITバブルとは違う」とは良く言われていますが、
それでも、警戒感は安易に解かず、ディフェンシブ銘柄や現金(または債券)の比率も一定率保っておく、という姿勢は重要だと考えます。
(※そうした意味では、著者も今後、買い増しを控える事で少しずつ現金比率を相対的に高めていく可能性もあります。)
まとめ
まとめておきます。
・全期間(2004年以降)で見ると、VGT(情報技術)が1位。反面、ワースト1位はVFH(金融)。
・直近5年では、1位はVGT(情報技術)。ワースト1位はVDE(エネルギー)。
・直近2年では、1位はVGT(情報技術)。ワースト1位はVDE(エネルギー)。
・直近1年では、1位はVFH(金融)。ワースト1位はVDE(エネルギー)。
なお、配当再投資を前提とした投資パフォーマンスを表すランキング(チャート)ではない、という点にはご留意下さい。
おまけ(TOP5比較チャート)
ゴチャゴチャして見辛い部分もあるので、一応、長期パフォーマンスTOP5のETF(+VTI)比較チャートも掲載しておきます。

全期間。それにつけてもVDCの安定感よ。
直近5年。ヘルスケアの期待が随分と高まった期間だと分かります。
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