目次
はじめに
「ADR」(American Depositary Receipt)とは、米国預託証券とも呼ばれ、NYSEなどアメリカ市場を通じて(アメリカ以外の)海外株を購入出来る証券のことです。
最近では、SBI証券、楽天証券などADR取扱銘柄も増えて来て、米国株式と同じように購入出来るため、非常に便利です。
そうした中、英国株(ADR)は個人投資家の間でも人気を集めています。
英国株(ADR)の魅力は、何と言っても「外国源泉税額」がかからない点。
そのため、特に配当金狙いでNISA口座での買い付けに選ばれる事も多い(※)のが特徴です。
(※)米国株の場合、NISA口座で買い付けても、国内の税額は非課税になるものの、10%の外国源泉税額は発生してしまうため。
要するに、NISA口座買付の場合は、英国株(ADR)は税金がお得!という事(※)です。
(※)特定口座買付の場合は、外国税額控除という制度があるため、必ずしもこの限りではありません。
そこで、本記事では、英国株(ADR)の主要銘柄10種をピックアップし、英国株インデックスETF「EWU」と併せて長期チャートで一気に比較・考察してみます。
英国個別株(ADR)10種概要
※ティッカーコードは米国市場での表記です。
HSBC(HSBC)・・・世界的な総合金融グループ。ロンドンに本社を置く。母体は香港上海銀行で1991年に設立。
BTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)・・・世界最大のタバコ会社。「ラッキーストライク」「ケント」「クール」等が有名。世界180か国でタバコ販売。
RDSB(ロイヤル・ダッチ・シェル)・・・欧州石油メジャー(垂直統合型)。オランダに本社を置く。ホタテ貝のロゴマーク。ロイヤル・ダッチとシェルが2005年に合併。
BP(BP)・・・欧州石油メジャー(垂直統合型)。確認埋蔵量で世界第二位。傘下子会社がスタンド併営でコンビニも展開。
GSK(グラクソ・スミスクライン)・・・グローバル製薬企業。呼吸器・抗ウイルス・ワクチンに強い。「シュミテクト」「ポリデント」も有名。世界150カ国でビジネス展開。
AZN(アストラゼネカ)・・・総合製薬会社。抗がん剤、糖尿病薬、抗ぜんそく薬に強い。世界売上高ランキング第10位(2016年)。
DEO(ディアジオ)・・・英国酒類大手。「スミノフ」「ギネス」「ジョニー・ウォーカー」等が有名。ギネス社とグランドメトロポリタン社が1997年に合併。
VOD(ボーダフォン)・・・英国通信サービス会社。約30ヵ国の電気通信事業を有する。2012年にケーブル・アンド・ワイヤレスを買収。
UL(ユニリーバ)・・・家庭用品世界大手。オランダと英国に本社を置く。「リプトン」「Dove」「LUX」等が有名。1929年にマーガリン会社と石鹸会社が合併。
NGG(ナショナルグリッド)・・・英国公益事業会社。送電とガス供給を行う。イギリスの電力自由化(1980年代)に伴って生まれた会社。
英国株ETF「EWU」概要
※データは2017年10月24日地点。
ここで、iSharesが運用する、英国株インデックス指数「MSCI United Kingdom」連動のETF「EWU」の概要についても触れておきます。
RDSAとRDSBが別々にランクインしている事を踏まえると、実質はTOP9ですね。
公益事業株のNGG(ナショナルグリッド)はこの表ではランクインしていません。

ETF概要です。構成銘柄は109種。
出来高、流動性については(個人投資家にとっては)問題ない水準ですね。
PERは24倍と、特別割安感はありませんが、分配金利回りが4.91%と、米国株ETFと比較してもかなりの高配当水準です。
一方、信託報酬に関しては0.48%と、(ETFとしては)割高感が否めません。
そのため現状では、このETFを単体で購入するよりは、TOP10銘柄を個別株で買い持ちした方が良いかな、という印象です。
本記事では、英国個別株とのチャート比較対象としてEWUを用います。
英国ADR10種(+EWU)比較チャート
※出典はYahoo Finance(英語版)。
※画像が小さくて見辛い場合、クリックで拡大できます。
※チャートには配当(再投資)は加味されていません。
全期間
パフォーマンスのトップ1位はBTIで約753%、ワースト1位は(見辛いですが)HSBCで約40%、ワースト2位に僅差でEWU(市場インデックス)が約42%、という結果に。
まずは何と言っても、タバコ銘柄のBTIが冗談みたいに突き抜けてます。流石はシーゲル先生お墨付きのタバコビジネス。
次に目を引くのは、VOD(ボーダフォン)が2000年頃をピークに激しい山を形成している点。やはり、ITバブルの影響の激しさを物語っていますね。
ちなみに、ITバブル崩壊でソフトバンクの株価も一時、100分の1に下がったそうです。当時は大変だっただろうなぁ・・。
直近5年間
パフォーマンス1位はAZN(アストラゼネカ)で約48%、ワースト1位はRDSB(ロイヤル・ダッチ・シェル)で約-12%。

以前、バンガードセクターETF比較の記事(※)でも書きましたが、やはり直近5年はヘルスケア期待が顕著ですね。
ヘルスケア業種はシーゲルセクターで今後も長期的に有望ですが、AZN含め、今から仕込むには少しバリュエーションに慎重になった方が良いのかも知れません。
反面、エネルギーセクターのRDSBは長期低迷からの底打ちも見え、仕込み時としても悪くないタイミングに見えます。(※投資判断は自己責任にてお願いします)
直近2年間
パフォーマンス1位はHSBCで約25%、ワースト1位はNGG(ナショナルグリッド)で約-20%。
イングランド銀行(英中央銀行)の利上げ期待が(1つの要素として)金融株を押し上げた形、だと著者は理解しています。
利上げ期待→金融株が買われる、という流れは、先述の米国株セクターETF比較記事で挙げた内容とも類似性を見出だせます。
反面、この期間では公益株の不人気も目立ちますね。
直近1年間
パフォーマンス1位はHSBCで約28%ですが、ほぼ同着でUL(ユニリーバ)が約28%で2位につけています。ワースト1位はNGGで約-11%。
ユニリーバの好調、(市場平均と比較しての)大幅なアウトパフォームが目立ちますね。
まとめ
まとめておきます。
・長期(1996年以降)で見ると、BTI(タバコ)が断トツ1位。反面、ワースト1位はHSBC(金融)。
・直近5年では、1位はAZN(ヘルスケア)。ワースト1位はRDSB(石油)。
・直近2年では、1位はHSBC(金融)。ワースト1位はNGG(公益)。
・直近1年では、1位はHSBC(金融)、ほぼ同着でUL(生活品)。ワースト1位はNGG(公益)。
なお、配当再投資を前提とした投資パフォーマンスを表すランキング(チャート)ではない、という点にはご留意下さい。
おまけ~直近配当利回りTOP5比較チャート~
おまけで、直近の配当利回りTOP5銘柄と、そこに絞った比較チャートも掲載しておきます。
【第1位】BP・・・6.19%
【第2位】RDSB・・・6.00%
【第3位】VOD・・・5.64%
【第4位】GSK・・・4.86%
【第5位】HSBC・・・4.07%
※配当利回りは2017年10月24日地点で集計。出典はYahoo!Finance。
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